お願い!サンタさん

2014年12月25日

~クリスマスの昼下がり、とある公園にて~

「やまとくん、おはよー!」

「あ、おはよう、らんちゃん」

「冬休みの宿題進んでる?」

「いやぁ、5年になって急に難しくなった気がしない?」

「そう?」

「そうだよ、だって…」

「あ、そんなことより、サンタクロースに何もらった?」

「あ、僕?えー、…金魚」

「そうなんだ、金魚かー、やまとくんが金魚好きだったなんて知らなかったなー」

「うん、まあね…あ、らんちゃんは?」

「実はねー、あたしも金魚」

「え!?ほんとに?金魚好きだったの?」

「えへへ、言ったことなかったっけ?」

「うん、たぶん、初めて聞いた…」

「どんな金魚もらったの?」

「らんちゅうっていうやつ…」

「えー、偶然、あたしもらんちゅうだよー」

「ええ!?そうなの?人気なの!?」

「まあ、そうなんじゃない?」

「すごい偶然だね!でも僕、金魚飼うの初めてだからちょっと不安で…」

「実はあたしも初めてなの」

「そうなの?」

「うん、だからこれから一緒に頑張って育ててこ?」

「そうだね!」

「あ、ねえねえ、これからやまとくんち金魚見に行ってい?」

「うん、おいでよ!」




~1ヵ月前、やまと家の食卓~

「おい、やまと、今年はサンタさんに何をお願いするんだ?」

「え?まだ特に決めてないけど…」

「そうなのか?ほら、いろいろあるじゃないか、あのー、妖怪なんとかとか人気のやつが」

「いやー、だってもう5年だし…」

「でも何かあるだろ、好きなものとか興味あるものとか」

「え、あー、好きなもの……
(好きなもの?好きな…好き…好き?…らんちゃん?)
らんちy…、あ、いや、なんでもないなんでもない!」

「お?らんちy…らんちゅう?らんちゅうか!?金魚のらんちゅうが好きなのか?」

「ん?あ、そうそう、それ、らんちゅうの金魚のやつが好きかなー、なんて…」

「へー、あ、そうか、父さんも昔飼ったことあったなぁ」

「へえー、あ、そうなんだー、遺伝かなぁ?はははー…」



~2週間前、早朝の通学路~

「やまとくんのお父さん、おはよー!」

「おう、おはよう、らんちゃん!今日も元気だなぁ」

「うん、毎日元気!これからやまとくん迎えに行ってきます!」

「いつも悪いねえ」

「やまとくんのお父さんもお仕事頑張ってねー!」

「ありがとうね、あ、そうそう、もうじきクリスマスだけど、らんちゃんはサンタに何をお願いしたんだい?」

「うーん、まだ何も…」

「そうなのか、早くお願いしないと間に合わないぞ」

「そうなんだけど…あ、やまとくんは何をお願いしたんですか?」

「それは…言えないなぁ」

「えー、教えてよ教えてよー!」

「うーん、しょうがないなぁ、やまとには内緒だぞ」

「うんうん」

らんちゅう、だって」

「らん、ちゅ、う?」

「らんちゅうっていう種類の金魚だよ」

「へー、やまとくん、金魚好きだったんだ…」

「そうらしいよ」

「へー…、確かにあたしも早く決めないとなー…あ!やばい、行かなきゃ、じゃあ、いってきまーす!」

「はーい、気を付けていってらっしゃい」

「あ、あのぉ…」

「なんだい?」

「今日あたしが聞いたこと、やまとくんには内緒にしといてくださいね」



今日もまた、金魚飼育者が増えました。

きっかけなんてなんでもいいんですよねー。

勘違いであろうと偶然であろうと。

あ、偶然じゃなくて、作戦か(笑)

お願い!サンタさん

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